結婚とは、食事、思想、趣味、経済、住居その他生活のあらゆる面で、仲間になるということですが、結婚当初、あるいは結婚前には、これらいくつもの条件のうちのひとつが、たいへんよくつり合いがとれていると、他の条件のふつり合いなどというものは、そのため、それほど苦にならないようです、つまり、つり合いのとれているひとつの点だけを、バカに強力なものとして考えるからなのです。夫婦をつなぐ糸が十本あるとしましょう。そのうち一本だけがバカに太い糸でつながれているように思われると、あとの糸が切れていても、あるいはどんなに細くても、結構やってゆけるように考えるのです。ところが結婚して実生活に入るやいなや、十本の糸がそれぞれに大切なものであることが自然にわかってきます。趣味の一致という一本の太い糸だけではどうにもならない ことに気がついてきます。そしてその途端、夫婦は何となくさびしくなり、不幸になるのではないでしょうか。つまり、夫婦のつり合いというものは、全体的なつり合いでないと困るようです。夫婦は友だちとはちがいます。友だちでしたら、絵の友だち、お華道の友だち、勉強のお友だち、というふうに、幾人もの別々の相手、つり合いのとれた相手をもつことができましょう。けれども、夫婦は一対一なのです。私たちは自分に似通ったものは理解できますが、自分とあんまりかけ離れたものは、普通、理解できないのです。これは判りきったことです。ですから玉の輿にのった人妻は、存外結婚生活においてしあわせではなかったろうと思います。もし、出会った相性が合う人と結婚しても仲が悪くなったらここを思い出してください。


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